Category Archives: 建築デザイン思考

大阪2023

久しぶりのエントリー。今回は大阪の研修旅行です。 見学できたのは、以下です。 ①狭山池博物館(安藤忠雄) ②大阪木材仲買会館(竹中工務店) ③大阪府立中之島図書館(野口孫市、日高胖) ④大阪市中央公会堂(岡田信一郎、辰野金吾、片岡安) ⑤こども本の森中之島(安藤忠雄) ⑥中之島美術館(遠藤克彦) ⑦がもよんモデル いつも一人旅が基本ですが、今回は、JIA正会員が団体で見学ができるということで、参加しました。 2日間みっちり建築見ることが出来ました。 建築を体感するというのは、ITとは対局にある物質との戦いの結果をいつでも感じることのできる、稀な存在ではなかろうか。これからの時代においては、そんな行為そのものも、より重要な位置付けになっていくんじゃないかなと感じます。僕の若い頃は、建築の情報もそんなに潤沢にはなくて、見たいものを歩き回って探したものだが、そういう苦労をすると余計に見たいという意志が試されるわけで、見たからにはより学びたいという意志も生まれる。 そして、そのような感動は年齢を重ねても、ずっと心に残っているものです。 多くの人の心に響く建築を作りたい・・・。 そんな決意を新たにできた、旅行となりました。…

小さな建築

今までで一番小さな建築の計画。 でも、手順は大きさに関係なく順序よく進めないと、完成することが出来ません。 しかも、クライアントによるセルフビルドです。 小さな建築こそ、そこに確かな思いを込められるべきとも思います。 僕にとっては当たり前のことでも、一つ一つに感動しているクライアントの姿を見ることは、とても新鮮です。 建築を買うことは、資金さえあれば誰にでも可能ですが、つくるとなると単純ではありません。 そして思い描く理想を求めるのなら、さらに困難を極めます。 建築関係者に多いのですが、金をかければなんだってできるという人がいます。 そういう人間に限って、理想を求めたことがないか限界を知らないことが多いです。 ギリギリを攻めることの困難さは、経験したことがなければ理解できません。 そして、この現場もそういう人間によって、大変な迷惑を被りました。 そんな状況によって、結果的にセルフビルドになりましたが、それもまた必然のようにも思えます。なんとか年内に上棟しようとしましたが、雪のために断念しました。 材料の搬入で年内作業は終了。来春に持ち越しとなりました。 今年は災害級のドカ雪で、新潟は大変みたいです。 今年もいろいろありましたが、来年はいい年になるといいなぁ。 建築をめざして・・・。…

Y-factory

木製サッシ工場の増築工事の計画。もう3〜4年前から計画していましたが最終的にアンビルドとなったので、クライアントのご了承を得て、計画案を公開します。 この案の前に、鉄骨2階建て案もあったのですが、資金計画の見直しにより規模を縮小して、木造に拘った案がいいということで、20mスパンという木造ではなかなか難しい構造に挑戦しました。スチールロッドを併用したハイブリッド型であれば、対応できるメーカーもあったりしますが、意匠屋としては合理的な中にも”モク”であることの意味とか表現を考えたいということで、大量の信州唐松の”雨”が降る天井を妄想しました。 ”鬼滅”で一躍有名になった市松状にトリプルガラスの高断熱木製サッシによって、気密と断熱の良い工場空間のあり方を追求しています。 数年前の台風による浸水も経験した地域なので、防災の観点も配慮しながら、計画しています。実現はできませんでしたが、この試みに無駄はないと信じたい・・・。 CGムービーと概要…

UT引渡し

なんとか引渡しすることができました。 まだ残工事がいっぱいあるので、完成と言える状態ではないですが、とりあえずひと段落。 内部の写真しか、まだ撮れていないけれど、なかなか精度良く仕上がりました。 施工者様は、最初から最後までほぼ外注しないで、マルチスキルのワンチームで施工するという挑戦をほぼ成し遂げました。 僕にとってもかなりの挑戦的なプロジェクトになったと思います。 一見すれば、今までと変わらずに出来上がっている様に見えますが、そのプロセスはかなりの紆余曲折がありました。 新たな発見はもちろんありましたが、思わぬ失敗もありました。 それをなんとかリカバリーしながら、ここまで創り上げました。 昨今は効率重視の工業製品の寄せ集めで、住宅なんかは簡単に出来る時代に、ここまでの精度で一品ものの現場製作である建築を、多能工チームでコツコツ作ることが、世の中に何か新たな価値を生んでいるかどうかは正直わからない。 ただ言えるのは、いろいろなコストを含めた制約の中で、ここに建てるならば、これ以上ない住宅になったということ。 クライアントと僕と施工者は、きっと同じ気持ち。 最後に、クライアントにはこの様なチャンスを頂いて、本当に感謝しかありません。 そして、一緒に頑張ってくれた親方と職人チームの皆様…

SI訪問

コロナ禍は収束方向ではありますが、まだまだ油断はできない状況の中、「SI-house」の見学とご相談に伺ってきました。外出自粛で家にこもることが多くなってしまった昨今。住宅のあり方は、急激な改革を強制的にしなければならない状況になってきました。家の中で、仕事をする環境も増えてくると、当然住宅に対する捉え方も変わるでしょう。そして、社会が変革すれば、住宅も変わって行くと思います。それは建築全体にも言えると思います。どう変わっていくのかは、まだ分かりません。でも以前と同じ状況に戻ることは、多分難しいと思います。。環境も関係も、常に変化している。変わるもの、変わらないもの、信じること、信じられないこと。その選択の積み重ね。正しさに固執していれば、恐らく生き抜いていくことは難しいと思います。絶対的なものよりも、相対的。価値観でさえも流動的になっていくかもしれない。この住宅のオーナーご家族の暮らしぶりは、僕に色々な事を教えてくれる。 中庭のシマトネリコがとっても立派になっていました。オーナーの愛情があふれていて、緑がキレイ。樹形もイイ。水庭についても、いい話が聞けました。企業秘密に取っておこう・・・。 生活感のない空間は美しいかもしれないが、生活感の美しさを考えた方が自然だし生活している事を否…

謹賀新年2020

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。年越しの準備もそこそこに、迎えました新年です。今年の恵方詣りは穂高神社。昨年は今までの構想をカタチにする事に没頭できた一年だったと思います。また、いろんな人に出会えた年でもありました。新たなプロジェクトが動きつつある中で、今年はカタチになったものが評価される年になるといいなぁ。Olympic year でもあり、僕の年齢もキリのいい数字になるので、より大きい流れを作りたい・・・2020!…

甲府竜王駅

甲府に行ったので、安藤さんの竜王駅に寄ってみた。丹下さんの山梨文化会館も行きたかったけど、気付いた時には日が暮れていた。安藤さんと言えば、中之島に図書館を作るらしいのだが、その設計費と工事費を事務所が負担するらしい。運営費は個人や企業からの寄付が基本のようです。そのニュースを聞いて、その偉大さに感動したのはもちろんのこと、何か壮大なドラマを見たような気持ちになりました。中之島と言えば、有名なタマゴ案を思い出しますが、もともと依頼がある仕事ではなく、他にも大阪駅の屋上緑化とか、若い頃の安藤さんは色々提案しては無視されます。その後10メートル模型や巻物状の図面など、何十年にも渡ってひたすら中之島へのANDO計画をつくり続けています。そして、遂に自身の寄付で図書館を創り上げようとするこの凄さは、並大抵の精神力ではない。最近では大病もされたようだし、国立競技場コンペの件で批判を浴びたり、とても順風満帆には(僕個人の主観です)見えない中で、これほどの想いを持ち続けることの凄さを知っておくべきだと僕は思う。一方で、こんなハコモノはいらないという意見も少なからずあるようで。あるブログでこのことを批判している記事を見ました。その主旨は、昨今の活字離れを憂いて図書館をつくるなんて飛躍しすぎで、建築的な…

SI-house写真集 重版

「SI-house」写真集の在庫がなくなってしまったので、重版しました。 初版当時は、なかった各賞受賞のキャプションを追加しました。 以前の印刷環境から変わってしまったようで、仕様が特殊で対応出来る業者が限定されてしまいました。 紙の質感が少し違ってしまったのですが、何とか満足のいく仕上がりになりました。 住宅は作品ではないとか、建築と住宅は違うとか、そういう批判をする人が大勢いることを 知っているしその意見が全て間違っているとは思いません。 ただ、僕は住宅という建築の素晴らしさを知っていて、作品としての住宅が 生活を豊かにできるということを信じています。 僕の設計した住宅が、性能もデザインも優れていて、なおかつ他と比べてコストも安いならば それは画期的な発明であるし、それを広く一般化することは社会にとっても重要だと思います。 世の中に100%の真実は存在しないと僕は考えます。 同じ時間を共有した他人同士が、同じものを見て、同じ現象を感じても 自分の感情や意味が、その他人と同じであるという前提は、100%ではない。 全く違うことは想像しにくいが、そうなることも考えられるし、90%以上同化している可能性もある。 他人の視点を想像することは出来ても、完全に自分のものにすることは究極には難…

そらしま

事務所のすぐ近くに古道具屋さんがあるらしい。 ということを、妻が発見したので、早速いってみた。 それは、僕の日常の風景の中に溶け込んでいて、全くお店らしくない顔をして、佇んでいた。 でも、お店「らしさ」って何?と自問すると、途端に言葉に詰まってしまうのだけど。 入口は事務所になっていて、唯一のあったかいところ。 ココ以外は、とても寒くて外より寒い感じがするのは、光のせいだろうか。 最近の性能重視の空間とは違う、身軽な空間の優しい光がここちいい。 でも、ここちよさは、人それぞれ違うと僕は思う。 気温や空気が数字に変換されて評価することも大切かもしれないけれど 好きな写真が一枚あるだけで、その空間がここちいいモノに昇華してしまう人もいれば 単なる不動産的価値しか感じ取れない人もいる。 古道具だって、ただ古いだけで使えないーとか、汚いなーと思うのか、こう使ったらカワイイねーとか 無垢材削ったら、新品だよねーとかって思うのかで価値は異なる。 建築家の内藤廣さんの受売りだけど、今使ってるその辺の割り箸だって、保存していれば100年後には文化財になるらしい。 僕には、その瞬間を見ることは出来ないけどね。 古道具を使いこなすのは、それだけでかっこいいーと思います。 究極の古道具だったカルマンギアを…

2018 謹賀新年

2018年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。 さて、年末の話ではありますが、木曽町で計画されている庁舎のコンペ結果が発表されました。 実は私も参加しておりましたが、1次審査を通過できずという結果でした。 なので、2次審査は気楽に結果を楽しみにしておりました。 そして、その結果を見てあらためてコンペの難しさと理不尽さ感じました。 1次も通過してない分際で、とやかく言うつもりもないのですが 少し残念な気持ちになりました。アイキャッチ画像は提出案です。 近年、求められている公共は、特に現状の日本の世論というのは とかくリスクを避ける傾向が強いように思います。 インターネットの発達によって、情報を手軽に扱えている割に 文化や思想というレベルでの、発達や発展がまるで逆行しているように思えます。 建築は特にモノづくりという側面が強いので、物質というリアルと向き合う世界です。 それは、今のIT社会の側面とそぐわない部分が多々あります。 どんなに、バーチャル空間が素晴らしくなったとしても、建築そのものを電子化することは、現状不可能です。 それができたら、『マトリックス』が現実化しますが・・・。 人間もまた、電子化することが不可能である限り、建築はリアルな素材と向き合わずに…

HILL OF THE BUDDHA

約5年ぶりの札幌。 5年で町が大きく変わるわけではないけれど、少しずつ変化してくのが都市でもある。 以前はなかった、「頭大仏殿」安藤忠雄設計。 実は、実家のお墓がこの霊園にあるのだが、墓参りも満足に出来ずにいたのに心が痛みつつ まさか安藤作品と対峙することになろうとは・・・。 この霊園には、昔からモアイ像やストーンヘンジがあり、ちょっと奇妙な雰囲気を醸し出していた。 しかし、いくら正確に模倣したとしても、模倣でしかなく唯一無二な存在になることは出来ない。 モアイは見たことがないが、ストーンヘンジは実物を数年前に見た。 芝の上を歩く人数も制限され、慎重に保存されていたのを思い出す。 そこにある石像は、とても忠実かもしれないが、やはり巨石群というだけで、モアイでもストーンヘンジでもない。 大仏自体も鎌倉の大仏のようであるが、鎌倉ではないし、石像の大仏だ。 しかし、そんなある種、無造作に散らばっていたピースが、あたかも最初から決まっていたかのごとく おさまってしまうのは、安藤忠雄という構成力によってという以外に言葉が見つからない。 建築に機能が必要なのか疑問になるくらい、建築の価値というものを突きつけられる。 「ラベンダーの丘に飛び出す大仏の頭」 言葉にすると、これだけの建築だ。 でも、こ…