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2006/06/27 耐震性能

耐震偽装問題が姉歯氏ひとりの問題になりつつある中で、建築の耐震性能について。
最近は、事件の影響もあって耐震という概念が一般的に認知されつつあるが、その判断基準は
未だ不明確な部分が多い。
テレビの特番で分かりやすく報道しようと努力しているのは、理解出来るがあまりにも簡略化しているため
かえって混乱を招きかねない情報があると思う。
例えば、建物形状による耐震診断のたぐいは、理解出来ない。
形状だけで性能が測れるのであれば、構造家は必要ないし、構造設計は必要ない。
全ての形状を箱形にする事で耐震性能が上がるほど、建築は単純ではない。
しかし、そこまで設計者の判断が信用されていないということでもあるので、一概に批判も出来ないが。
形状による耐震性能について、偏心という考え方がある。
これは、建物の強度に偏りがある為に、地震による水平力が掛かるとねじれが起きる。
ねじれが起きると、小さい水平力でも倒壊する危険があるので、出来るだけ偏心を抑える設計をしなければならない。
では、どの程度の偏心率にするのかというのが問題。
もちろん基準値というのがある。それに納めれば基準をクリアする事が出来るのだが、その形状以外が
すぐに耐震基準を下回るのかと言えば、そうではない。
例えば、1階に駐車場があって道路面が全て開口でその他が全て壁のようなプランがある。よくあるパターン。
こういう形式の住宅が阪神大震災でも倒壊した事例もあるので、耐震上は弱い部類に入るのかもしれない。
しかし、そのプランの建物が全て弱いと判断するのは間違いである。
偏心はプラン(形)だけで検討されるものではなく、形が同じでも偏心を抑える技術はいろいろある。
その技術を使うか使わないかであって、使いたくても(技術力がなくて)使えないこともある。
さらに、高度な技術で設計しても、それを実現する施工能力がなければならないという側面もあるが。

ハウスメーカーの家は耐震性能があると思われている人の話を聞いたので、その事についても一言。
鉄骨系、木質系に関わらず、ハウスメーカーはある一定のルールの中で設計されている。
ある程度能力のある設計者であれば、多少のルール違反は設計者の能力でカバーできるが、たいていは
社内で煙たがられるので、ほとんどルール違反をせずにつくられる事が多い。
ハウスメーカーの住宅はほとんどが型式認定という認定を受けていて、そのルール上で設計されていれば
構造計算はクリアされているので、個別に計算をしなくても確認申請に通るようになっている。
だから、ルール違反をしなければ、建築基準法の耐震性能を確保出来る。
阪神・淡路大震災の時も多くのハウスメーカー(要はプレハブ)が倒壊せずに頑張った。
それが評価されて、耐震性能があるというイメージにつながったのが大きいと思う。
では、それ以外の建物が倒壊したのはなぜか。
建築基準法による基準をクリアしていない建物と、クリアしているが余力が少ない建物が壊れているのだと思う。
その多くは、施工不良による基準を満たしていない場合が多かったと聞いている。
だとすれば、耐震性能を確保出来るシステムをつくったハウスメーカーが評価を受けるのは当然といえば当然。
しかし、建築家がつくる住宅よりも耐震性能があると言われるとそれは少し歪んでいる。
あくまで耐震基準を下回らないシステムがあるだけで、耐震性能をコントロールしている訳ではない。
あまり知られていないようだが、淡路島にある安藤忠雄さんの「本福寺水御堂」は震災で周囲の崖が崩れている中で
クラック一つ入らずにその上部のため池を非常用の水源として周囲の人々に役立ったと、本福寺の方に実際に聞いた。
安藤氏本人も講演会で「周囲の人に、あの楕円のお皿はきっと2つに割れてるよ」と震災直後に言われたそうだ。
安藤さんの建築の配筋写真を見た事があるが、それは非常に美しい。
非常に緻密でありそこに密実なコンクリートが打込まれるのだから、当然その構造的な余力があるのだと思う。
つまり、しっかりつくる事が構造的な余力を生む。しっかりつくられていないものは、例え基準を上回っていても怪しいのではないか。とも思う。
建築家の技量に差はあるが、多かれ少なかれ建築家を自負している人間が携われば、その思いの強さは
並大抵ではない。それが、ハウスメーカーの耐震システムと同じように機能している。
全ての建築家がそうとは限らないが、(そうでなければ建築家ではないが)建築家の建築が耐震性能が劣る事はないだろう。

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