質_その2

前回からの続き。質についての思考です。 美術館のようなビルディングタイプであれば、建築自体もアート的な要素を 多分に求められると思われますが、住宅の場合はどうでしょう。 建築のデザインは機能と切り離されて存在するものは、あまりないと思いますが 機能だけで優劣を判断していくと、建築には成り得ない場合が多々あります。 例えば、安藤忠雄さんの「住吉の長屋」は最終的に日本建築学会賞という 日本のアカデミックな建築界の最高峰の賞を受賞しています。 しかし、雑誌で発表された当初は、様々な批判にさらされました。 その一番の意見は、トイレやお風呂にいく度に一度、外へ出なければならない というプラン上の制限についてだったと思います。 その後、その建築の評価が確立された後に、同じようなプランの コンクリート住宅がたくさん作られました。 しかし、どの住宅も一度外へ出るというプランはほとんど無く ガラスで仕切られていたり、中庭自体に屋根を掛けたりしています。 僕の知るかぎり、住吉を超える質に到達しているのはあまり無いように思います。 中庭があることや、外に出なければならないプランや 打ち放しで構成されていることや、その他の様々な要素を 単にトレースしただけでは、建築として高い質には到達できないということだと…

質_その1

日本には建築士と呼ばれる有資格者が、一級でも35万人くらいいるらしいのですが その中で美術館の設計を一生の中で、経験できる人は何人いるのでしょう。 恐らくほんの一握りの人であろうと思います。 もちろん僕のキャリアにも存在しません。 しかし、どんな建築、例えば、小さな住宅であったとしても、その空間の質を美術館やそれに匹敵するレベルに、常に 近づけたいと思いながら設計をしています。最近完成した『軽井沢千住博美術館』は、僕にとって、とてもインパクト のある建築です。そして、空間の質として、一つの到達点を見せてくれました。同時に、それに対する批判の意見を耳にしました。 それは、「絵に対する紫外線の劣化に対しての設計的な配慮がない」というもの。 美術館は絵を収蔵、展示する場所なのだから、そこに直射日光を入れる設計は言語道断であると。 その批判は最もらしいものですが、僕にはとても違和感がありました。 そして、その批判を裏付けるように、最近になって絵の周辺に遮光用のカーテンが設置されたようです。 (ただし、聞いた話ですので、僕が確認したことではありません。) この意見を述べた人は、恐らく「自分が言った通りのことが起こっている。だから自分の意見は正しい。」 と思っているかもしれません。 しかし、それ…

引越し

借りてた自宅を引っ越しました。 新しい自宅の2階のテラスからの眺め。 ザ・イナカって感じ。 本当は、早いとこ自邸を建てて引っ越すまでのつもりが・・・。 以前の住まいは、結局、新築から7年半ほど住んでいました。 いざ引っ越そうと思っても、あまり選択肢が多くない地方の町なので 満足度の高い物件が、そうそうあるわけでもなく。 今回は、ほぼ立地条件で選択。 決めたところは、事務所に近くて、学校に近くて、少し古い一戸建て。 2階建てに住むのは久しぶり。 思った以上に、住みづらい。 広さは、以前に比べると1.5倍近く広いのに。 面積詰め込んだだけの住宅は、考えもんです。 最近は、三低主義のように、賃貸が主流みたいな流れがありますが やっぱり、住まいを所有したい欲求はなくならない気がします。 その所有方法は多様化していくのでしょうけれど。 2階からカルマンが見える。 ちっちゃな庭があるのが、唯一の気に入ってる所。…

SI-house外構工事

久しぶりのブログ更新です。SI-houseの外構工事が終了しました。 やっぱり外構は大切です。 建築を作るだけで精一杯なことが多々ありますが 周囲をきちんと整えることで、建築の納まりが落ち着きます。 自分の仕事を客観視することは、建築家にとって大事なことですが 純粋な客観性が果たして可能なんでしょうか。 自分の思い入れをゼロにして自作を見ることは、僕にはとても難しい。 でも、あらためて見る『SI-house』は、少し冷めてしまった僕の心を ちょっとだけ揺さぶってくれました。 僕が必死に目指したものが、なんだったのか。 分からなくなってしまいそうな気持ちを少しだけ引っ張ってくれたような。…

Steve。。。

やっと完読しました。 改めて、破天荒な人柄と人生です。 ジョブズのやり方に疑問はありますが 生き方にはとても共感します。 経営とか経済を超えたところに、製品という目的と 会社という存在の意義があるということを 自らの人生で証明したという意味で。 アップルに興味を持った時期がジョブズの復帰と リンクしていることを知りました。 影響というのは、意識の外でも多大に受けるものだと感じます。 これからのアップルは恐らく厳しい戦いになると思います。 ビル・ゲイツの指摘の半分は正解だと私も思います。 もしも、さらなる躍進が待っていたとしたら ジョブズの存在が、すでに代替することができたもの であるということをアップル自身が証明することになります。 でもジョブズはどっちに転んでも、怒り狂うのは同じかも。 アップル本社にもかなり口出ししてたとは知りませんでした。 ジョブズなら建築でも傑作を創れたのかもしれません。…

SI-house_引渡し

「SI-house」の引渡しが終了いたしました。 ただ、完全に工事が終わっていない部分もありまして なかなかスパっと終わらないのが常なんですが。 建築自体もまだ、”慣らし運転”の状態なので 使用するにあたって、慣れて頂く期間が必要です。 特にこの建物には、見えない所で設備的な工夫を施していますので 季節によってコントロールが必要です。 引越しも終えて、徐々に生活に馴染んでいくと思いますが ご家族のとっても楽しそうな笑顔が印象的でした。 ここで切り取られている画像は、建築の一瞬でしかありません。 しかし建築や空間は、音や温度、匂い、様々な五感に訴えかけるものです。 Web上で画像を簡単に見ることができる時代になっても 建築は体感して初めて理解の出来るものだと思います。 そして、その土地に定着し、その場の環境と共に影響を受けながら また与えながら、時間を重ねてゆくものです。 このエントリーの写真は内覧会の時に撮影された写真と同じアングルで撮りました。 時間も異なりますが、光の具合も全く異なります。 日々の時間の中で、建築は光と共に変化します。 その変化をいつも自然に感じられる建築をつくりたい。 人間にとっての自然は、人間自身でもあるのだから。…

もうすぐ・・・。

オープンハウスは無事に終了致しました。 関係各所の皆様とご来場の方々に御礼申し上げます。 天候に恵まれずに、引渡しが延びてしまいましたが やるべきことを粛々とこなしていく現場の皆様の熱意に 大変感謝しています。 毎度の事なんですが、僕の大事な子供(作品)がまた旅立ちます。 建築も人間もどういう生まれ方をしたとしても 愛されなければ幸せにはなれない気がします。 せめて、生みの親は無条件の愛情で愛していきたいと思う今日この頃。 僕の愛すべき「SI-house」は、愛してもらえるかな・・・。…

SI-house内覧会

只今、SI-houseの内覧会中です。なんと、会場でブログの更新! 午前中は天気も良くて、気持ちの良い空間が より引き立つのを体感出来ました。 自分の作った建築を自分で体感することは、とても大事なことですが 現実にはに引き渡してしまえば、純粋に体感することはなかなか出来ません。 だからオープンハウスは、そういう自分自身の評価の場でもあります。 いい空間は時間を経てもその輝きを失いません。 それは、過去の巨匠の作品を体感すればわかります。 そして、空間もナマモノ。 使い方によってイキイキもするし死んだりもします。 たまに過去の自作に訪問して、暮らしぶりが美しかったりすると 本当に感動します。 そういうモノサシの上で、自分の作品がどのあたりなのか。 そして、近付いているのか、追い抜いたのか、いやいやまだでしょ。 そんなことを考えながら・・・。…

焼杉ハウス

藤森さん設計の焼杉ハウス。 事務所のすぐ近くにあるのを全く知らなかったのだが ウチの優秀なスタッフが見つけたので、行ってみました。 当然、外から感じるしか無いのですが、配置が絶妙・・・。 道路からの距離感とスケール感が良かったです。 シマシマの外壁は好みがわかれるところですが。 目の前に保存樹があって、そこからの距離感や隣の蔵との関係。 リビングからの視線とかアプローチからの視線とか。 思った以上に現代建築です。 周囲の環境から切り離すように建つのは、モダニズムの常套手段ですが 周囲と馴染んでいるようでいて、異彩を放つというのは こういうことなのかもしれません。 モダンじゃないけれど、和風ではない。 ジャパニーズモダンという訳のわからないカテゴリーでは決して無い。 木が得意な外国人建築家が日本を参照して住宅つくりました・・・みたいな感じ。 決して悪い意味ではありません。 藤森さんは、現代と過去の誰の真似でもないものを信条にしていると語っていたので それは、やはり独自の世界観がファンタジーに見えるということなんだと思います。 やっぱり、あの小屋は藤森建築には欠かせないんだろうな・・・。 あと、屋根を貫通して生える木も・・・。…

OPEN HOUSE_SI(内覧会)

クライアント様のご好意により、3月10日(土)〜11日(日)にオープンハウスを行います。 開催場所は長野県飯田市になります。 要予約となりますので、ご興味のある方は当事務所までメールにて事前にご連絡下さい。 竣工後の内覧会となりますので、小さいお子様やペットのご入場はご遠慮させて頂きます。 当事務所のメール→mail@tndesign.net よろしくお願い致します。…

雑感・・・

最近は、現場監理が少なくなったので事務所で計画の時間が増えました。 それは、現場の瞬発力と違って、考えを構築するという別な脳力を使う気がします。 そこで思うのは、住宅の設計ほど複雑で難しい物はないなぁと感じます。 住宅の規模は日本の場合は、あまり大きなものは少ない。 予算の事も関係しますが、小さいものはたくさんあります。 しかし、そこで要求される機能はあまり変化はなく、お風呂やトイレがない家はほとんどない。 そして、キッチンからはじまって、オーディオやらテレビやら洗濯機など。 どうやって使ってどう動くか・・・。 それなら、ここに家具が必要で・・・。 家具にはこういう種類があって、こういうデザインにしましょう。 などなど、設計しようと思えば、やることは盛りだくさん。 これだけ、多種多様な設計があるのは、住宅ぐらいなんじゃないかと思うくらい。 だからこそ、それぞれに専門家もたくさんいます。 家具をつくる人、ソファをつくる人、キッチンをつくる人。 収納デザイナーとか、インテリアデザイナーとか。 例えば、大工さんは木造だったら構造や内装のほとんどを作るけれど クロスを貼れるわけではない。 家具が上手な大工さんもいれば、そんなことに興味のない大工さんもいる。 誰にどんな仕事をお願いするかによっ…