ウツクシサ

美について

「SI-house」は竣工して3年が経ち4年目になります。
竣工してからすぐに壊れてしまったところや修理したところが当然あります。
工業製品と違って、一品生産である建築は、具現化する前にテストをする余裕がありません。
ましてや挑戦的な建築は、それだけでリスクを内包しています。
同じモノを大量生産するならば、多くのバグを事前に取り去る必要もありますが
それを完璧にできる建築は、余程の予算と工期が必要になります。

無名のアトリエ事務所が作る建築に、そんな余裕はあるはずもなく。
リスクを根性で振り払い、立ち向かいます。

どんなモノでも生まれたてはキレイに見えます。
どんなバックボーンを持っていても。
若者も輝いて見えますよね・・・。

しかし、年を重ねて劣化するのか、維持するのか、さらに輝くのか。
その後の環境に左右されるのは、人生に似ている気がします。
丁寧に使われた職人の道具が、美しい光を放つのと同じように
崇高な理論の元に愛された建築は、美しいオーラを放ちます。

ウツクシイとキレイの違いってわかりますか?
僕も全て言語化できるわけではないですが、建築のウツクシさとキレイさの違いはわかります。
新築のハウスメーカーの家はどれもキレイ。
60年前に建てられた、コルビュジェの「ラ・トゥーレット修道院」はウツクシイ。
片やピカピカの新建材、片や表面はザラザラのコンクリート打放し。
部分的に見たら決して綺麗ではないのに、オーラを放つモノ。
こんなモノに出会ったら、間違いなくそれは「ウツクシイ」

キレイさにかき消されないウツクシさを獲得するには時間を経てから見ればいい。
「SI-house」に住まい手の痕跡がたくさんありました。
ガラスの汚れや、床の傷。壁の割れや、屋根の汚れ。
でも、それがこの建築の「ウツクシさ」をちっとも汚していなかった。

そして、一番キレイな状態を知っているクライアントは、それをキレイに
使いたいという欲求が必ず生まれます。
だから、ウツクシク保とうと努力すると思います。
それって、幸せな好循環だと思います・・・。

写真は瀬戸内にある犬島のセジマ作品です。
これもウツクシイですね。
最近、木の仕上げがキになる・・・。