鉄骨検査

T-houseの鉄骨検査に安曇野へ。
もう何度も鉄骨検査をしているけれど、未だに建築パーツを事前に確認するワクワク感は変わらない。
もちろん、事前に製作図を確認して、その通りの実物が目の前にあるだけの話なのですが。
でも、これが自分のイメージする空間を支える構造体なのだと考えると、楽しくなるのです。

鉄骨部材は規格品であり、ある程度決まった形です。
それを、適材適所で設計をして部材を使い分け、時にはカットして形を変えて骨組みを作る。
部材同士は溶接で接合されているので、それが規定の強度を持っているか、変形はないか
パーツとしての形状がきちんとできているか、など様々な項目をチェックします。
それでも、建築現場に完璧はありません。
致命的なトラブルが発生する可能性はゼロではありません。
構造躯体の強度が低下するようなミスは、あまり起こりませんが意匠上のトラブルはよく起こります。
それは、デザインの意図というのを施工者(特に職人レベル)で理解することは非常に難しいということです。
だからこそ、建築家は現場を見て、細かい指示をしながらそれを作品として昇華させるべく腐心するのです。
現場監督はスムーズに進めるために、現場を管理し、我々もそれに協力をします。
ただ、僕が現場を見て考えているのは、この建築がより美しくなるためにはどうするのがベストなのかという
最後の足掻きをしています。
現場を動かせばお金も動くのでスムースさを断ち切れば、それは費用に跳ね返ります。
最小限の労力で最大限の効果を持って、いかにデザインを昇華させるか・・・それが設計監理。

設計者はよくオーケストラの指揮者に例えられますが、指揮者はすべての楽器の理解度が無いと
出来ないとも言われます。つまり演奏する能力と理解度は比例しないということ。
それは、建築を造ることと、設計することは違うということと同じだと私は思います。

だから私は、自分の現場に入る職人の方々には最大限の敬意と感謝を持って接するようにしています。
その技術を最大限に発揮してもらうために。
当然、最初からレベルが低いことが分かっていれば、排除しようとするでしょう。
技術の無い演奏者を引き連れてオーケストラを率いる指揮者がいないように。

写真の柱はパイプではなく無垢材。
見た目に反して重い・・・。