Category Archives: 2006

はこだて未来大学

函館は観光名所もいっぱいあって、函館山もあっていい所なんだけどいつも素通り。 理由はフェリーが夜中に着くせいなんだけど。 今回は、しっかり見ました!未来大学。 山本理顕さんの設計です。 函館の中心からやや離れた小高い所にあります。 建築は大きいスケールになればなるほど、そのデザイン手法の違いが明確になる気がします。 ここでは、山本さんのいう「システム」が徹底されています。 「埼玉」で使用されたシステムを当然参考にしているのでしょうが、さらなる挑戦が感じられます。 「システム」といった時点でそれを使用する事に支配されてしまいそうですが、ここでは全くそれを感じません。 まさにこの空間が圧倒的です。 究極のワンルーム。 とても開かれている感じが周囲の自然にマッチしていています。 この気持ちよさのためだけに、あらゆる技術を多用している。 決して技術を使う事が目的ではなく、この「気持ちよさ」という定量しがたい感覚のために総動員されているように感じました。 それが建築の本当の価値であり、意味だと感じます。 こんな大学でもう一度学んでみたくなりました。…

めでぃあてーく

せんだいに来てこれを見ない訳にはいきません。 今回で3回目ですが、いついっても人がいっぱいです。 ちょうど夏祭りの真っ最中でしたので、通行止めがたくさんあって思いっきり迷いました。 通行止め解除直後に到着。 施設のほとんどが終了していましたが、それでもイイ雰囲気は伝わってきます。 コンペ当初の案は、一階が公開空地として計画されていたようですが、気候が許せば ガラス壁が開口したら、気持ちよいだろう。 確か道路側は開口できるようになっていたような。 仙台は本当に公共の施設が充実してます。県立図書館は原さんの設計だし。 個人的にいい図書館がある街が好きなので、仙台市民が羨ましい。…

宮城スタジアム

阿部さんシリーズで宮城スタジアムです。 スケールの幅が極端に広いのが建築の面白さのひとつだとつくづく感じます。 スケールが大きくなっても建築家の力量は如実に表れるのは建築が建築たる所以ではないでしょうか。 緊張感が違います。こういうタイプの建築を見てもあまり面白さは感じられないのが通常なのですが 見所がたくさんありました。 スケールが大きいものは、デザイン密度が低くなるのはどうしようもありません。 その密度の低さをメリットと考えるかデメリットと考えるかによって、プラスにもマイナスにもふれる。 大きくなれば、見えないものも小さいとよく見える。 人間の大きさは変わらない。 遠景と近景の違いを把握しながらデザインするのは並大抵ではありません。 でも、そういう能力は小さいものをつくる上でも必要なのだろう。 設計の世界にもビルディングタイプによってカテゴライズされる傾向がありますが 本来の力量は、そういうものを超越したところにあって、経験値の差ではないと思います。 本質的に優れているかいないか。 それを見極めるのも、力量が必要でしょうけど。 そんな事を考えながら、見ていたらあっという間に一周してしまいました。 時間にすると約一時間。 エントランスの水盤が維持されていないのが、ちょっと残念。…

菅野美術館

東北シリーズ第二弾! 阿部仁史さんによる美術館です。 こういう小さなキューブをこんなにも豊かな空間で構成出来るのかと思わせる作品です。 素材と空間がしっくり来る感じが心地よいです。 エンボスだけを見ているとグラフィカルに見えますが、決してグラフィックな処理だけで 成立していないことは空間体験する事でより明確に感じました。 複雑でありながら、単純であること。 わかりにくいわかりやすさ。 それが、この小さな建築に凝縮されている。 今回の展示は設計者自らによるインスタレーションだったのですが より建築的な感じにまとまっていて、ヨイです。 アクセスの困難さもいい味出してます。…

青森県立美術館

休みを利用して行ってまいりました。aomori-museum! シャガールは好きな画家でもありますが、シャガール展の存在すら知らずに イザ!青森へ!という感じです。 『アレコ』の背景画は圧巻です。 入場料が少しお高いのですが、見る価値あります。 さて、青”木”美術館ですが、土にこだわった作品です。 隣接する縄文文化施設と一緒に見ると、古代の「土」と現代の「土」との関係がより明確になります。 土へのこだわりと同時に「白」へのこだわりも感じられました。 その白さは土への対比として用いられていますが、全体的に白さが強調されすぎているようにも 感じられました。 エントランスの感じはバランスが良かったです。 最近、白い美術館が多いような気がしますが流行なのでしょうか。 展示空間はホワイトキューブが常識化しているようですが、それを超える空間を欲しているような気もします。 そういう意味で、青森の土壁に展示している絵画がとても新鮮でした。 いい作品はどんな展示空間にも負けないし、そういうせめぎ合いで美術作品を評価してもいいと思います。 常設展示も非常に面白くて、美術館のソフト面もクオリティーが高いと感じました。 建築に興味のある方は是非隣接する縄文遺跡にも触れてほしいと思います。…

TNデザイン一級建築設計事務所

八百長

Photo:Le Corbusier, La Cité Radieuse, Marseille by C1ssou 世の中は、ボクシングの八百長疑惑で盛り上がっているようですが・・・。 勝負の世界なので、勝つか負けるか勝者と敗者しかいないのだけれども だからといって勝つ事で全てを正当化する事は出来ない。 負ける事や負け方がすばらしく美しく感動する事もある。 日本は戦争に負けたから、経済大国になれたのかも知れない。 建築の勝負と言えば、コンペと呼ばれる設計競技がある。 国際的なオープンコンペから住宅のネットコンペまで、その規模や派手さは様々だが 多かれ少なかれ、仕事を依頼されるには何らかの競い合いを勝ち抜いているはずだから 全ての設計は広義のコンペティションだと言えるかも知れない。 しかし、そこで勝てるのは一案だけであり応募数が多ければ多い程負けた人も多数いるという事だ。 つまり、ほとんどの人が負けている。私も含めて。 だからこそ、勝った者は負けた者に対して敬意を払い、負けた者は勝った者を讃える事が出来る。 隈研吾さんの「負ける建築」という著書があるが、負け方の考察が面白い。 まさに、建築で美しい負け方を表現している。あんな負け方が出来るなら負けてもいいと思う。 この業界でも、大きな設…

TNデザイン一級建築設計事務所

fiber city

遅ればせながら、FIBER CITY~東京2050 の都市計画を見る事ができました。 これは丹下先生が発表した「東京1960」の現代版なのですが、大野先生が言うように 建築家が都市を論じ、考察している気配というか風潮が少ないのは私自身も感じるところ。 建築家にとって都市は前面道路であり、ファサードをガラス張りにすれば「都市に開く」と 言ってしまうくらい、矮小な存在だ。とある芸術家が言っていたが、それに近い状況を感じる。 しかし、だからといって直接に単体の建築が影響力を持てるかと言えば、とたんにトーンダウンする。 それは建築を単体で捉えている限り困難だろう。 だからこそ、都市計画というイメージの共有が必要だ。 それぞれが出来る事は、わずかかも知れないが、同じイメージを共有している人間の活動が 点から線へ、線から面へ拡張する事でより有効になってくる。 そういう意味で、この「東京2050」で提示された都市イメージは、私には非常に魅力的に見えた。 拡張から縮小へ、「コンパクトな大都市」という概念が「東京1960」と対比している分わかりやく 自然に受け入れられる。特に地方都市の人口減少は、今すぐに問題が起こってもおかしくない。 状況は突然変化するものでもないが、かといってそれが停止するものでも…

TNデザイン一級建築設計事務所

クラシック

Photo:Karmann Ghia motif by exfordy 最近、クラシックカーに乗ってます。 まだまだ、手を入れなければならない部分があり なじむまでに時間がかかりますが、徐々に自分のモノになっていく感じがたまらない。 そして、事務所と自宅の往復しかしていないのだが、止まっているとやたらと声をかけられる。 そのほとんどが、40代、50代以上の男性。 「この車、本当に動くのですか?」 「もちろん、動きます。」 こういう会話が多くなった。 「若い頃、これに乗ってたんですよ」 と言われる事もある。 「記憶」というものはデザインの要素の中で重要だが時間を伴うものなので難しい面もある。 建築は特に街の記憶を刻んでいると言える。 車は動くものだが、それでも街の記憶の一端を担っているとも言える。 旧車の場合はむしろその人の人生の記憶になっている場合が多いかもしれない。 日本の街並には、昭和中期や後期に建てられた建築が、街の記憶にまで昇華している場合は 少ないように思える。 そのほとんどが、スクラップとなって更新されている気がする。 昭和初期でもよほどの価値が見いだせない限り、同じだったりする。 車ほどデザインに開きはないが、建築にも流れがあり、その時代の流行がある。 それが、同じよう…

TNデザイン一級建築設計事務所

脱ダム宣言

先日、打合せの中で現長野県知事の「脱ダム宣言」についての話になった。 打合せとしては、素材の話であったのだが。 そこでの話。 先方「コンクリートは自然の素材じゃないから・・・」 相棒「でも、コンクリートは地場の材料を使ってつくる素材としては世界中で 使用されていて最も普及している素材ですよ」 先方「私は田中知事に賛同しているので、コンクリートは嫌いです。だって脱ダム はコンクリートのダムをつくらないって宣言しているのですから」 私 「それは、コンクリートがいけないのではなくダムをつくる事がムダだと宣言しているのだと思います。」 先方「さぁ、そうなのかしらね。私はそうは思いませんけど」 田中知事の宣言を良く見てみると、ダムの代わりに河川の治水地業を充実させると書いてある。 つまり、ダムで治水をする事よりも河川で治水をする方が割安らしい。コンクリートのことについては 全く触れられていない。 確かに「コンクリートでダムをつくるべきでない」と宣言しているが、これはコンクリートが悪者ではなく ダムのつくりかたが悪いと言っているのではないか。 木造でダムをつくれば環境に優しいとでも思っているのか・・・。 フードマイレージやウッドマイルズなどが最近言われているが、環境を軸に考えた時、自然=木材とい…

TNデザイン一級建築設計事務所

素材感

木の素材感だけで構成される建築は、現代においては非常に稀な存在だろう。 素材感を殺す事なく建築に仕立て上げるのは容易ではない。 多くの場合は素材感と言うよりも様式によって建築”らしく”しているがほとんどではないか。 今、手掛けている建築が素材感なのか様式なのかの判断は見る人に任せるとして、素材感を引き出す 努力をするべきだろう。 多くの場合、予算や技術的な問題によって棚上げになってしまうが建築家がそれをしてしまったら その建築は間違いなく建築でなくなる。 模型と建築の違いがあるとすればそこに全てがあるのではないか。 それが建築を建築足らしめているもの。…

TNデザイン一級建築設計事務所

お堂の工事が始まりました。 写真の柱は鬼門柱という木造の地鎮祭には欠かせない柱です。 本来は実際に使用する柱に文字を書いてもらうのですが、隠れる柱がないので小屋束にする予定の材で代用。 しかし、小屋に隠れてしまうにはもったいない位の材料です。 木と言うのは自然と直結しやすいので、有機的なイメージが強いのですが 良い材料と言うのは、そういったことを超越して、むしろ抽象的に感じました。 最近は木造でも集成材を使う機会が増えてきましたが、やはり無垢材の持つ独特のパワーは捨てがたいものです。…